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17. ゆうじ 動くな 楽器店に行くと、憧れのギターが高い壁にかけてあった。ウクレレを覚え、ギ ターの存在を知り、いっぺんに魅了されたんだ。だから、暇があると楽器店に 見に出かけたよ。ところが、親父はギターを弾くことを嫌っていたんだ。どこ までもバイオリンだったんだな。 「よし、母ちゃんがギターば買うてやるバイ!」親父の意見に逆らう、母親の 身を切る決意。もちろん秘密。空をも飛ぶよな嬉しさと、親父に見つかる不安 とでゴチャゴチャのドキドキ。勇んで出かけた楽器店。僕は値段を見て決めた。 一番安いギターにした。母ちゃんの痛みに答えるべく当然のこと。どうせギタ ーの良し悪しなんて分からないし、どれもこれも素敵なギターだったんだ。 親父に知られぬよう、買ってやろうと試みた母ちゃん。そのもくろみは、あえ なく砕け散った。瞬時だった。楽器店を出て、ギターを大事に抱いて母ちゃん とバスを待っていたら、なんと、スクーターで走り回る銀行員の親父を発見。 『あぁ、神は我々を見放す気か~』 母ちゃんも、それに気付き「ゆうじ、動くな」動けば、よけいに気付かれる。 緊急事態。直ちに僕らは直立不動。目は瞬きをせず遠くへ。 こそこそと隠れようと動かず<動かない>その確率に賭けた母ちゃんだったが …。 親父のスクーターは、迷わず僕らのところへ。あ~ぁ神は我々をきれいに見放 した。ところが「ギター買ったのか」と、期待を裏切った親父の笑顔。『えっ ?怒らないの?』もっとも、それが逆に怖かったけどね。タッタッターと親父 が去った後。一抹の不安。『雷は、家に帰ってからかも…』
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