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29. 歌うデザイナー 『よし!』僕は準備を整え<出前コンサート>と称し<どこへでも出向きます >をモットーにコンサート活動を開始した。20歳の時だよ。施設はもとより、 地域のイベント、学校、お祭り広場、お寺、病院、体育館、いろんなところで 歌い始めたんだ。姉や弟も加わってね。後に、音楽村<昔ばなし>というグル ープを結成。27名の仲間たちと、音楽活動だけでなく、町が主催する募金活動 にも積極的に参加していったんだ。 この頃の音楽は奉仕活動だったから、いろんな仕事をした。例えば、色紙に絵 を書いて、バイクで売り回っていたこともある。芸名?<道すすむ>どう?ダ サイ?(笑)。 イラスト、新聞の折り込みチラシ、メニュー、看板、POP(商品の紹介)な どなど。収入の柱はイラストだった。パネルにイラストを描き、喫茶店やスナ ックに飾らせてもらって、月ごとに交換していく、そのリース料を頂戴するん だ。そして、イラストを描いた色紙の販売。その色紙をバイクに積み込んでセ ールスしていたんだ。道すすむの色紙、1枚600円!。 色紙の題材にしようと、保育園の<のぞき>をやっていた。望遠レンズをつけ たカメラでね。フォーカスしていたんだよ。(そっ、あの井上章先輩の保育園) お陰で、警察の尋問を2回受けたよ。肩まで伸びた髪。田んぼのあぜ道で、で っかい望遠レンズのついたカメラでカシャカシャ。狙うは、遠くの保育園。不 審に思ったんだろうねぇ。保育園には若い保母さんたち。無理もない。実際、 保母さんに目を奪われることもしばしばあったからなぁ。「君、何してんの?」 「はい、子供たちを写しているんです」「へーっ、でっ、ここには何が入って んの?」と50ccバイクの荷台を指差すおまわりさん。バイクには、大工さんに 作ってもらった木製の箱を取り付けていたんだ。「見ます?」「よければ」「 どうぞ」中にはカメラのレンズ、スケッチブック、筆箱、そして商品の色紙が いっぱい。ほとんど黒い疑いの目だったおまわりさんも、説明すると、さわや かな大人に変身。「そうか、夢があるんだなぁ。頑張れよ」、まるで青春ドラ マの如く、去っていった。おまわりさんて、みんないい人なんだ。 しかし、生活費を稼ぐには至らず、敢え無く挫折。11ヶ月間のデザイナー気 取りの時代。さぁ、次! ♪ スケッチブック小脇にかかえて ほっつき歩く 髪を伸ばした そうさ君は町の芸術家 才能なんてこれっぽっちも ないくせに 時折海を眺めてみては ロダンの彫刻みたいに 「支離滅裂」より
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