エッセー

ホーム写心館エッセー > 23. あほ、バカ、間抜け
23. あほ、バカ、間抜け 買い求めたフォークギターで僕は歌い始めた。クラス会や文化祭でね。オリジ ナル曲を発表するようになった。僕が歌うことで、こんなに喜んでくれる。元 気が出てきたって言ってくれる…歌って凄い。その効果に驚く日々だった。そ の快感に浸る日々だった。クラシックの曲で学校のステージに立ったのは一度 だけ。後は、みんなオリジナル曲を歌うためにステージに上がったんだ。シン ガー・ソングライターになりたい…そんな予感の中だった。 ところで、高校3年間、僕は同じ先生が担任だった。白木憲正という数学の先 生でね。豪快で、優しくて、カッコイイ先生だった。「学校なんかやめっちま え」が口癖だったから、どの程度なのか想像してもらえると思う。元気のいい 男たちが悪ふざけをすると、「出て来い。ここに並べ。足を踏ん張れ、奥歯を 噛め」バシーッ!でも、その後の悲しそうな表情。その目に涙が溢れていたこ とを、僕らは見逃さなかった。まっすぐに叱って下さった。全身全霊で愛して 下さる先生だった。人間を感じる先生だった。みんな大好きだった。 その先生の授業中。ツカツカと歩み寄ったことがある。「先生、今、日本を代 表する小原聖子という女流ギタリストが近くに来ているんです。会いに行かせ て下さい」憧れのギタリストに会いたくてね。この時間ならば会えるだろうと、 昨晩のリサイタル終了の後、係の人に、アポイントをとってもらっていたんだ よ。学校をサボって休もうかと思ったけど出来ず…ギリギリまで言い出せなく てね。すると先生。「お前の人生にとって、大事なことか?」って。「はい」 って言ったら「よしっ、行って来い!」ねっ、ねっ、カッコイイだろ。しびれ たよ、実際。 この先生のお陰で高校生活は充実していた。就職クラスは、2クラスあったん だけど、ひっくるめて、みんな同じクラスって感じでね。みんな将来のことを 真剣に考えていたから、その分、不安も抱えていた。だから人生につて、いろ んな話ができたんだ。就職クラス?そうだよ、僕は就職クラス。税理士の浜田 朗も花草清孝も、同じクラス。 この高校、2年生から進学コースと就職コースに分けられることになっていた んだよ。1年生の終わり頃、その希望を出すことになった。ほんの少しだけ、 迷ったけどね。だって、シンガー・ソングライターに学歴なんて…。 あの川上先生には、丁寧に、丁重に、ずーっと後になって報告。「ったく~っ、 お前って奴は!あほ!バカ!間抜け!」ぎょい。 ♪ 裸んぼうの イチョウの木 涙 みっつ 嬉しくて 君の 葉っぱが 増えていく 「イチョウの木」より
当サイトに掲載されている歌詞及び文章の著作権はむたゆうじ とプロダクション ティムに帰属します。また掲載されている写真
イラスト等の画像の著作権は、それぞれの著作者にあります。このため、歌詞及び文章と、画像等の無断転載は一切お断り致します。
inserted by FC2 system