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22. のそ 海へ 夏休み。小学校のプールの監視をしたよ。同級生の花草清孝とペアを組んで。 そこは午前中を小学生、午後を中学生に開放していたプールだったんだ。でも ね、一種のプライドのようなものが芽生えかけている中学生が、小学校のプー ルに泳ぎに来るわけがない。そう思わない?案の定、午後の部はプラスチック 製の監視用の長椅子がそのまま、僕らの昼寝用のベッドと化したんだ。 うだるような暑さのプールサイド。2時間くらいの昼寝。デレーンと情けない 顔で、満腹になったライオンのように、時折ヨダレを流しながら…清孝は寝て いた。一方僕は、キリッとしたカモシカだった、と思うよ。ともあれ、夢を見 てしまうくらい、気持ちよく眠っていたからね。最高のアルバイト。 寝ぼけた僕の頭の中に、キラリンと光るものが。「ごめん、俺、ちょっと家に 帰ってくる!」<のそ>を連れてきたんだよ。ペットの亀。もう、すでに興奮 モード。<のそ>の嬉しそうな表情といったら。僕はプールの向こう岸からの そを放したんだ。ポチャン。そして僕は反対岸からドボン。「おーい、のそ、 今助けに行くぞ!」もはや太平洋。互いに?叫び合い、探し続ける。とっ、そ の時、「ゆうじさーん、ここです!」そりゃあもう、可愛いったらありゃしな い。目をパッチリと開けて、必死に泳いで来るではないかいな。「のそーっ、 俺だ、もう大丈夫だぞー」 ねっ、感動的でしょ。<のそ>にとって初めての海。その泳ぎっぷりは見事な もんだった。こんなに泳げるんだって、驚いたよ。だって、小さな四角い金魚 鉢で飼っていたんだから。同じ水の中で、やっと<のそ>の気持ちに近づけた 気がしたよ。のそは、プールの中で初めて亀になれたんだ。
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