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12. ごっくん生ツバ大作戦 〈すずめ〉を捕まえたい。突然、とりつかれてしまった僕。寝ても覚めても、 スズメ、スズメ。飼いたいっていう感情の数倍も、とにかく捕まえたいって いうそれだけ。狩猟本能むき出し。 まずはオーソドックスに〈ザルかぶせ生け捕り作戦〉。漫画本で学んだままに、 行動開始。餌はもちろん米。地面にパラパラと撒き、その上に丸いザルを斜め にして、棒切れで突っ張り、その棒に結わえた紐を、導火線のように走らせて、 物陰の僕の手元に。ごっくん生つば大作戦。息を殺し、ひたすら待つ。壁際で の横目使いに疲れるくらい。自然と紐を持つ手に神経が集中する。しか~し。 どこかで見ていたか、いくら待てどもスズメが来ない。敵?ながらあっぱれ。 よし、作戦変更! 急いで家に帰り、米びつから取り出した米少々を、これまた黙って拝借した親 父の酒に一昼夜浸ける。これぞ〈泥酔フラフラ生け捕り作戦〉翌日。高鳴る胸 に戸惑いながら、近所の米蔵の前。特製の米を撒く。物陰に隠れ息を潜める。 来た来た、来ました、来たんだよ。食べてるよ、しっかり。 興奮のルツボ。 ところが、僕が撒いた米を食べているのか、蔵主が落とした米を食べているの か、わかんない。な~に焦りは禁物。きっと、もうじき、フラフラに酔っぱら うに違いない。しか~し。そんな素振りすら見せない。『もしや、晩酌をやっ ているスズメたちか』顔を赤らめる者もなければ、ゲーッする者もいない。く そーっ。炎天下で、こっちがフラフラ。失敗。よし、再び作戦変更。 仕方ない。こうなりゃ、武力行使。〈ゴム銃バタバタ作戦〉自転車のチューブ を紐のように切って、叉になった木の枝にタコ紐でくくりつけた武器。石ころ を弾として、負傷させる作戦。やや気が重たいか?というと、そんな気持ち、 まったく無し。ここが人間の怖いところ。完全に麻痺している。 いざっ、バシッバシッ。見事命中、というイメージが先行しすぎるのか、現実 は甘くない。数打ちゃ当たると思っていたが、それどころか、あんなにたくさ ん居たスズメたちが、パーッと瞬時に居なくなっちまった。 しーん。祭りの後のむなしさ。僕の残酷むき出し時代の、ひとこま。
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